性染色体とゲノムの進化
これまで、ヒトを含む生物が進化してきた過程、特に性染色体とゲノムの進化を分子レベルで明らかにすることを目的に様々な生物種を用いて研究を行なってきた。
性決定システムは有性生殖にとって必要不可欠な現象であるが、性決定システムはとても多様である。例えば、爬虫類の性決定は環境の影響を受けやすい。オーストラリアに生息するフトアゴヒゲトカゲは温度依存型性決定システムを持ち、卵の孵化温度が高くなことでオスがメスに性転換する。そのため、環境温暖化が進むとメスしか生まれず、繁殖できなくなることが危惧されている。また、爬虫類だけでなく、両生類の性決定システムは謎に包まれている。哺乳類と鳥類は進化的に保存された性染色体と持つ:哺乳類は進化的に保存されたXY染色体(オスヘテロ接合型:XYオス、XXメス)を持ち、鳥類はXW染色体(メスヘテロ型:ZWメス、ZZオス)を持つ。しかし、日本に生息するツチガエルは同種内でもXY染色体とZW染色体を持つ集団がいることが知られている。また、哺乳類の中でもY染色体を失ったげっ歯類・霊長類、複数のXY性染色体を持つ有袋類・単孔類・霊長類などが存在する。
最新のゲノム科学、細胞遺伝学、分子発生学などの技術を集結することにより、これまで明らかにされてこなかった稀有な性決定システムの分子メカニズムを明らかにし、性決定システムがどのように多様な進化を経てきたのかについて明らかにしたいと考えている。
