哺乳類の性染色体の分子進化
哺乳類初期の性染色体進化での組換え抑制
哺乳類のXY染色体は、有胎盤哺乳類(ヒト等)と有袋類(ワラビー等)の共通祖先で二段階の組換え抑制が起きて、常染色体から性染色体が誕生したという仮説がある。そこで、その仮説の正当性を検証するために、大規模なゲノム配列を比較し、XY染色体の組換え抑制の痕跡を調べた。その結果、従来の説とは異なり、一度の大きな組換え抑制が祖先型性染色体で生じたことが示唆された。
Katsura Y, Satta Y. No evidence for a second evolutionary stratum during the early evolution of mammalian sex chromosomes. PLoS One. 7(10): e45488. 2012.
性決定遺伝子の分子進化・機能解析
ヒトのY染色体上には精巣決定遺伝子(SRY)がある。有袋類もSRYをもつが、これまでに有袋類の性決定遺伝子がSRYであるかどうかは明らかでなかった。そこで、ワラビータンパク質がDNA結合能をもっていることをシミュレーションにより推定し、ワラビーSRYがヒトと類似の転写制御能を持っていることを生化学的機能解析により示した。以上より、有袋類の性決定遺伝子がSRYであることが示唆された。
Katsura Y*, Kondo HX, Ryan J, Harley V, Satta Y. The Evolutionary Process of Mammalian Sex Determination Genes focusing on Marsupial SRYs. BMC Evolutionary Biology. 18:3. 2018.